五ヶ瀬川 (ごかせがわ)



 神話のふるさと高千穂を流れ、

 その名も神武天皇の兄、五瀬命に由来するという神話の川だ。


 高千穂町は、天孫降臨の「筑紫の日向の高千穂」の地を、霧島の高千穂峯と争っているが、

 なかなか決着がつかない。というより神話であり、真実は定かではなく決着するはずもない。

 また支流には岩戸川があり、川沿いの神社の対岸には天の岩戸がある。

 弟スサノオのあまりの乱暴狼藉のため、アマテラスは岩戸に引き篭もってしまった。

 皆既日食の比喩という説もあるが、天照大神が隠れたため世間が闇になった。

 困った八百万の神々は、天の安河の川原に集まって相談する。

 そして八百万の神々のお笑い作戦にまんまと引っ掛かかって扉を開けるとは、

 アマテラスは何とも憎めない人間らしい神様のようだ。


 また、高千穂峡がある。

 太古の昔、阿蘇山の火砕流が五ヶ瀬川渓谷に流れ込み、冷却固結して柱状節理ができた。

 五ヶ瀬川によって再び浸食され、X字峡谷となったのが高千穂峡だ。

 所によっては高さ100mにも達する断崖が7kmに亘って続いており、

 国の名勝、天然記念物に指定されている。

 夏になると涼を求めて多くの観光客で賑わう。

 狭い峡谷の中、所々水飛沫を浴びながら、混み合うポートを漕いだのはいつの頃だったか。

 近くの茶店でいただいたそうめん流しとともに、懐かしい夏の思い出となっている。


 五ヶ瀬川は鮎や山女の釣り場として知られ、秋から暮れにかけて簗場がたつ。

 300年の伝統を誇る流域の鮎梁は、秋の風物詩として有名で、

 鮎を焼く香ばしい香りは、「日本のかおり風景百選」にも選ばれている。


 支流に祝子川があり、それは大崩山系とともにある。

 読みは知らなければ分からない、ほうりがわである。

山を目指して清流を遡ると、河原に巨石がゴロゴロしている。

 その名の通り山が大きく崩れ、上流から転がって来たのだろうか。

 大崩登山のベースキャンプは大崩山荘と決まっている。

 ここを基点に祝子川を渡り、湧塚群から小積ダキを周回すれば、

 岩峰群と五葉松などの絶景を楽しむことができ、

 ルートを変えれば、一枚滑岩の景勝地、三里河原へ行くこともできる。


 五ヶ瀬川流域には大崩山の他にも、ロッククライミングで有名な比叡山や鉾岳、

 名瀑の行縢山など花崗岩の岩峰が連なっている。



 日本最南端のスキー場、五ヶ瀬ハイランドスキー場がある向坂山に源を発し、

 祖母傾や大崩山系から数多の流れを集め、

 河口付近で祝子川と北川を合わせ、延岡から日向灘へ注ぐ。