千代川 (せんだいがわ)


 鳥取と言えば、まず鳥取砂丘が思い浮かぶが、

 千代川はその成りたちになくてはならない役割を果たしている。


 中国山地の岩石が風化して砂となり、雨に流され、千代川によって日本海へ運ばれる。

 海底に堆積した砂は、沿岸流と波の働きによって岸へ打ち上げられ、

 強い北西の風によって内陸へと運ばれる。

 この自然の営みが幾年も続くことで、日本最大級の砂丘がつくられた。


 沖の山を源頭とし、氷ノ山等からの流れを集め、鳥取から日本海へ注ぐ。

 河口の東側には鳥取砂丘が広がり、西側には日本最大の池である湖山池があり、

 さらに因幡の白兎で有名な白兎海岸につながる。


 因幡の八神姫は、八十神たちの求婚を断り、白兎を救った心優しい大国主を選んだ。

 神話というのは、そのほとんどが訳の分らぬものだが、特にこの神話、何を伝えたいのか皆目不明である。

 今も昔も優しい男がもてるということか。ただそれだけのことなのか。

 ちなみに、智頭急行の看板車両も「スーパーはくと」。

 白うさぎが、因幡の地域イメージとして染み付いている。



 また、中流域の用瀬(もちがせ)は、流し雛で有名だ。

 源氏の君が祓いをして人形(ひとがた)を舟に乗せ、須磨の海へ流すくだりが源氏物語にあり、

 流し雛の原型は、遠く平安時代にまで遡る。


 旧暦三月三日、男女一対の紙雛を桟俵にのせ、菱餅や桃の小枝を添えて、災厄を託して千代川に流す。

 日本の伝統文化が、山あいの町でひっそりと情緒豊かに続けられてきた。


 瀬の曲りなぞりて雛の流れゆく