肘川 (ひじかわ)
肱川あらしという珍しい現象が起こる。
年寄りは肘川おろしとも言うそうだ。
晩秋から早春にかけて、放射冷却により生じた霧が、肘川中流域の大洲盆地に溜まる。
その霧がV字谷の肘川に沿って流れ出し、温かい伊予灘に向かって勢いよく一気に放出される。
ゴーゴー音をたてて、風速20mになることもあり、大規模な時には霧は沖合数キロに達するらしい。
なお、霧のためか大洲には昔から色白の美人が多いそうだ。
川の長さは100kmを超えるにもかかわず、源流から河口までの直線距離は18kmしかなく、
肘のように折れ曲がって流れることが、その名の由来の一説だが、
もう一つ怖い伝説がある。
日本各地に伝えられる人身御供の一つ、人柱に拠るものだ。
中世、伊予の守護職となった宇都宮氏が大洲に城を築いたとき、石垣が何回も崩れるため、
「神の祟りだ」と誰かが言い始め、だんだん皆がそう思い込んでいった。
昔はこんなとき、人柱をたてて神の怒りを鎮めるしかないと信じられていた。
人柱とは、神への捧げものとして、生きたまま人を土の中に埋めることで、
自ら進んで人柱になる者がいるはずもなく、くじ引きとなった。
そして、運悪く当たったが「おひじ」だった。
人々が最後の望みはないか聞くと、「この川に私の名を付けて下さい。」と話し土の中に埋められた。
それから石垣が崩れることはなく、立派な城が完成し、
おひじの願いどおり、城下を流れる川は「ひじ川」と名付けられた。
あ〜恐ろしい。
おひじも色白の美人だったのだろうか。
ホントの話かどうか怪しいが、現代ならありえない風習というか考え方であり、
科学的な時代に生まれ育ったことに感謝しなければなるまい。