由良川 (ゆらがわ)


 由良の門を渡る舟人かぢを絶え ゆくへも知らぬ恋のみちかな


 由良の河口の渡し舟、速い潮の流れに舵を取られてしまった。

 どこへ行くのか、ゆらゆら、ゆらゆら、ケセラセラ。

 運命に身を任せ、ゆくえも知らぬ不安よりも、どうにも止まらぬ胸の高まり。


 古来、誰もが知っているこの歌によって、恋の有様が日本人に共有されていった。

 不安と期待との間で揺れながら、ときめく想いへの従順と、どうにかなる楽観。


 現代にも、姿かたちを変えて、似たような歌がある。

 時の流れに身をまかせ あなたの色に染められ 一度の人生それさえ 捨てることもかまわない ♪〜
 
 昔より過激になった。人生を捨てることもかまわないのである。


 それから、日本を代表する女性シンガーソングライターの歌に、こういうサビもあった。

 ああ時の河を渡る船に オールはない 流されてく ♪〜

 まるで真似したかのようだ。


 現代の歌は、洋楽の影響もあってか、曲はメロディアスかつリズムカルになり、歌詞は長く直接的だが、

 どちらが名歌として永く後世へ伝えられていくのだろうか。

 おそらく前者ではなかろうか。



 由良川は、恋のみちのみならず、流れそのものもゆくえが知れない。

 地図を開けば、一見短いように思われるが、

 流域面積約1,900ku、長さ約150kmもあり、日本では大河だろう。

 河口から遡ってみると、初めは南西方面へ向かうのだが、福知山辺りで大きく90°以上旋回し、東へ向きを変える。

 そのあと本流は南方の内陸方面へ向かうことはなく、海岸線と平行に東へ向かい、源頭は三国岳辺りとなっている。

 三国岳といっても周辺に二つあり、北の三国岳(みくにだけ)が丹後、近江、若狭の三国境で、

 南の三国岳(さんごくだけ)が丹後、近江、山城の三国境となっている。源頭は北の三国岳だ。