大和川 (やまとがわ)


 大和には群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は煙立ち立つ 海原は鴎立ち立つ

 うまし国そ 蜻蛉島(あきつしま) 大和の国は


 万葉集巻頭第2、舒明天皇の有名な歌だが、

 標高150m足らずの天香具山に上って眺めると、海原にカモメの鳥山の風景が詠われている。

 今の奈良盆地ならばありえない光景だろう。

 ひょっとすると大昔、奈良盆地は海水湖であり、何らかの地殻変動で徐々に海水が干いていき、

 その跡が大和川になったのかもしれない。

 舒明天皇の頃までは、まだ海水湖の名残が広がり、カモメが立ち立っていたのだろうか。。



 神話の時代、神武天皇が橿原に都を定めてから、

 桓武天皇が山背に都を遷すまで、日本の黎明期を支えた古の川だ。

 上流の初瀬川や、支流となる飛鳥川、佐保川、曽我川、竜田川などは、

 万葉集、古今和歌集などの古典に多く歌われ、日本人の心に刻み込まれてきた。


 千早ぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは 

 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり


 色鮮やかな紅葉と美しい川の流れが目に浮ぶが、近年は残念なことに相当汚れているらしい。

 河川水質ワーストに毎年名を連ねている。

 
 かつては奈良盆地から大阪平野へ抜けると北へ進路を変え、河内湖となり、更に淀川に合流していたが、

 1704年、付け替え工事が行われ、現在のように真っ直ぐ西流して、大阪湾へ注ぐようになった。