日高川 (ひだかがわ)

 
 長さ120キロもあるというのに、どういうわけか二級水系に指定され、

 日本一長い二級河川となっている。

 日高川より規模の小さい一級水系がたくさんあるけれど、一級と二級の区別はなんなのだろうか。

 
 一級水系と二級水系の違いは、一級は国が選び、二級は都道府県が選ぶとのことだが、

 その選定基準は、一級が「特に重要」、二級が「重要」と曖昧で、

 長さとか面積とか数字で明快に決まっているわけではなく、モヤッとしている。


 重要性からすれば、和歌山県は日本有数の多雨地帯であることから、

 日高川でも洪水が多発しており、住民生活への影響は大きいと思われる。

 しかも和歌山県には、他にもいくつか大きな二級河川がある。

 ひょっとして、熊野の語源の一説にも隅(クマ)があったが、

 辺境のため特に重要ではないということだろうか。

 しかしもしそうだとすれば、北海道の留萌川や九州の本明川などのように、

 日本の中心部から遠く離れていながら、日高川よりもかなり規模の小さい川が、

 一級河川となっている説明がつかない。


 更に調べてみると、河川法施行規則に一級水系の指定基準があった。

 いろいろ書いてあるが、要約すれば次の8項目のいずれかに該当すれば、一級水系の基準を満たすようだ。


 @ 流域面積が1,000Ku以上

 A 流域面積が500Ku以上又は急勾配など管理困難で、

   想定氾濫面積が100Ku以上又は想定氾濫人口が10万人以上

 B 想定氾濫区域に県庁所在地など重要都市の市街地がある

 C 広域的用水、又は国家的事業実施地域への用水確保

 D 国際的、全国的に価値の高い自然環境等の維持、又は大都市圏の健全な生活環境の確保

 E 2つ以上の都府県にわたり、関係都府県の利害調整

 F 流域の都道府県以外の都道府県へ相当量の水又は電力の供給確保

 G 激甚な災害等により河川環境上の問題が発生しており、国の高度技術や財政力が必要
 

 まずは、流域面積が重視され、

 さらに、被災規模、利水規模、希少自然、都市生活、県間調整、問題発生などが要件とされている。

 
 これに日高川を当て込んでみると、


 @ 流域面積652Ku → ×

 A 流域面積は満たすが、想定氾濫面積約20Ku、同氾濫人口約2万4千人 → ×

 B 流域には西本願寺日高別院、別名日高御坊が地名となった、御坊市がある。

   日高地域の中核都市であり、人口2万5千人で、麻雀牌生産日本一を誇る

   太陽化学が立地しているが、一級水系に指定されていないことからすれば、

   重要都市ではないということか。国土交通省の職員は麻雀はしないのか。 → △

 C 椿山ダムは多目的ダムだが、広域的用水や国家的事業用水はないようだ。 → ×

 D 鮎とアマゴ釣りの名所でホタルも有名らしいが、全国的に価値が高いか。 → △

 E 奈良県に跨っているが、奈良県での流域面積は小さく、利害調整必要か。 → △ 

 F 椿山ダムで水力発電が行われ、関西電力に売電されているが、相当量か。 → △

 G 急流で蛇行が多く、また夏の雨量が多いため、しばしば水害をもたらし、

   昭和28年の水害では、死者行方不明者289名の大被害をもたらした。

   しかしながら、現状として河川環境上の問題が生じているかどうか不明。 → △


 中には微妙な項目もあるが、明確に基準を満たすものはないということか。

 ちょっと堅苦しい話になってしまった。

 理屈は後から付けるものだし、一級とか二級とか川からすればどうでも良いことだ。


 日高川は、和歌山県の最高峰、護摩壇山を源頭とし、山間部を大きく蛇行して流れ、

 御坊市から太平洋へ注ぐ。