手取川 (てどりがわ)


 この3文字から先ず連想されるのは、きっとみなさん同じに違いない。

 川とあるけれども川ではなく、同じ水だが酒である。


 験なき物を思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし  大伴旅人

 この歌に何度救われたか。


 前田利家とお松は、信長、秀吉、家康、時の権力者が移り変わる中で、加賀百万石を安堵された。

 おそらくとても運が良く、また、勘が冴え渡ったのだろう。

 
 北陸の華都、金沢。

 背後にモンブランが聳え、そこから手取川が流れだす。

 白山から流れ出す清らかな水、そして百万石の華やかな文化。

 銘酒が生まれないはずがない。


 ある秋の日、金沢から手取川沿いの国道をバスで延々と揺られ、白山へ向かった。

 途中、白峰村で豆腐を買い込み、登山口となるビジターセンターに泊り、湯豆腐を肴に手取川を楽しんだ。

 翌日、朝のうちはまだ雨が残っていたが、風が吹いて雲が流れ快晴となり、白山山頂の大観に恵まれた。