神通川 (じんつうがわ)


 阿賀野川と同様、公害問題が頭をよぎる。

 岐阜県飛騨市の神岡鉱山から排出されたカドミウムが高原川、神通川に流れ、富山県の農地を汚染した。

 そこでとれた米を長年食べた中高年の女性多数が、骨粗鬆症を伴う骨軟化症を発症。

 患者が「いたい、いたい」と骨の痛みを訴えて死ぬことから「イタイイタイ病」と名付けられた。

 カドミウムが腎臓皮質に蓄積されると、尿細管が障害をおこし、カルシウムやリンが尿に流出し骨がもろくなる。

 大正時代に発生し、患者は千人以上と推定されるが、発見は遅く1955年。68年に日本の公害病第1号に認定された。


 高度経済成長の反作用、影の部分といわれる。


 しかしはたして、経済成長は明るいサニーサイドなのだろうか。

 ひょっとしたら、国民は企業や政治から、ジュリアナ東京のように踊らされただけかもしれない。

 もちろん、所得が増え食うものに困らなくなるのは、ありがたいことに違いない。

 しかし、財産と幸福は単純に比例しないようにも思われる。いや、実は反比例するのかもしれない。

 とすると、収入が豊かになると心は貧しくなり、収入が貧しくなると心が豊かになるのか。

 はたまた、金持ちは悪人で、貧乏人は善人なのか。

 そういえば、悪人正機説というパラドックスもあった。金持ちこそ救われるということか。

 だんだん訳が分からなくなってきた。

 経済成長の善悪は良く分からないが、少なくとも良いことばかりではなさそうだ。


 
 神通川に戻ると、岐阜県では宮川といわれ、飛騨高山に源を発し、

 富山県境あたりで北アルプスから流れてきた高原川を合わせ、富山平野に出てそのまま北流し、富山湾に注ぐ。

 
 高原川の支流、蒲田川は槍ヶ岳に発し、槍穂と笠に挟まれた奥飛騨温泉郷を流れ、平湯から来た高原川に合流する。


 槍穂の東側斜面に降った雨は、梓川から犀川、信濃川となって新潟に流れ、

 西斜面に降った雨は、蒲田川から高原川、神通川となって富山に流れる。