雄物川 (おものがわ)


 まだ肌寒い5月の秋田空港に着陸し、雪解け水が溢れんばかりの雄物川を渡った。

 辺りはまだ早春の装いで、新緑の中に、山桜があちらこちらに咲いていた。

 夜、秋田の繁華街、川端を散策。

 夜の闇のなかで、雄物川の支流だろうか、もあ〜と水底から湧きあがるように、まんまんと流れていた。


 ところで、この勇壮なる川の名前は何なのであろうか。

 何を放流するのだろうか。日本海は女性名詞であろうか。

 異物が混ざると優秀になる。同類どうしでは劣化する。

 王家や同族会社が没落するのはこのためとも言われる。

 港町は美人が多い。横浜、神戸、長崎、確かにそうかもしれない。

 古代はむしろ海を隔てて外国と対面する日本海側が国際都市だった。

 秋田は、古代海洋都市で混ざり合って、秋田小町が生まれたのだろうか。


 支流となる桧木内川沿いには、みちのく小京都、角館がある。

 東京から新幹線こまちに乗って角館に着いたのは、薄曇りの秋の日だった。

 そのうち降ってきて、秋雨の武家屋敷もしっとりと風情があったが、有名なのは枝垂れ桜らしい。

 桧木内川沿いの桜のトンネルと併せて、角館は春が見頃のようだ。


 それから田沢湖のたつこ像を見学し、秘湯、乳頭温泉鶴の湯に浸かった。

 山中から西へ道を下る途中、ようやく陽が差して、田沢湖の湖面が光り輝いた。