狩野川 (かのがわ)


 天城山中に降った雨を集め、踊り子が歩いた下田街道に沿って、伊豆半島を北へ流れる。

 湯ヶ島、修善寺、長岡などの温泉街を過ぎ、三島周辺の湧水群や、

 頼朝と義経が初対面したと伝えられる黄瀬川を合わせ、沼津から駿河湾に注ぐ。


 清流であり、源流部では山葵栽培が盛んで、全国一の生産額を誇る。

 特産物の山葵漬けは、誰もが一度は食べたことがあるのではなかろうか。

 また清流のためか鮎の友釣りが盛んで、「狩野を制すれば全国を制す」と言われているらしい。



 修善寺は伊豆の小京都と呼ばれ、狩野川の支流となる桂川が流れ、嵐山もある。

 冬の雨の日に訪れたためか、はたまた、源氏の悲しい歴史が潜むためか、

 なんだか寂しい感じのするところだった。


 
 ある年の暮れ、天城山を縦走した。

 快晴で空気が澄んで、山頂から富士がくっきり眺められた。

 帰りは天城峠からバスに乗り、途中、湯ヶ島温泉で汗を流した。


 明けて正月、特急「あさぎり」で沼津、三島へ向かった。

 三島大社へ初詣に参り、葛城山から富士の大観を得た。


 三島周辺には、富士の伏流水があちこち湧きだしている。

 柿田川湧水群もその一つで、湧水量は一日に百万トン、東洋一といわれる。

 その湧水群から流れ出したのが柿田川で、

 狩野川に合流するまで全長約1.2kmと日本最短の一級河川となっている。

 また、季節を問わず15℃前後の一定した水温であり、さらに水質がとてもきれいで、

 日本三大清流の一つに数えられる。